はじめに

「自分は何が向いているんだろう?」そう考え込んだ経験はありませんか?

豊橋技術科学大学の5系(建築・都市システム学専攻)修士1年生の松下航太郎さんも、そんな疑問を抱いた一人でした。

「建築は自分に向いてないのかも……」という迷いを感じていた松下さんですが、カンボジアでのボランティアをきっかけに、「0から1を生み出すより、1を100にする役割」が自分に向いていると気づきました。

その気づきをきっかけに、ザンビアでの国際都市計画研究や日本での地域づくり活動など、積極的に挑戦の幅を広げています。

豊橋技術科学大学にはさまざまな分野で活躍する面白い学生がたくさんいますが、実はその存在を知る機会は意外と少ないもの。

このインタビュー企画では、学内の「身近で面白い先輩や同級生」の姿を通じて、「自分にも何かできるかもしれない」と一歩踏み出すきっかけを届けたいと思っています。

松下さんのストーリーを通じて、「挑戦することの面白さ」「自分らしい成長」について一緒に考えてみませんか?

「建築が向いてないかも」と思ったとき、カンボジアで見えた新しい視点

岩隈

岩隈

では早速なんですけど、松下さん、自己紹介をお願いできますか?

建築に興味を持ったきっかけや、現在取り組んでいる研究を教えてください!

松下さん

松下さん

今、技科大の5系(建築・都市システム学専攻)の修士1年生をしています。

出身は兵庫県の明石で、明石高専の建築学科を卒業してから編入してきました。

建築に興味を持ったきっかけはありがちなんですけど、「いつか自分の家を建ててみたい」という思いからでした。

そして現在は、国際都市計画研究室に所属しながらザンビアでの都市計画に関する研究を行っています。

岩隈

岩隈

技科大に編入したのは国際都市計画を学びたいという思いからでしょうか?

松下さん

松下さん

そうです。海外に行って、発展途上国の現実を見て、「国際的な視点で都市計画を学びたい」と思うようになりました。

そこで、国際都市計画を専門にされている小野先生がいる豊橋技科大の研究室を志望したんです。

実はほかの大学に行く選択肢もあったんですけど、海外に焦点を当てた指導をしてくれる研究室が魅力的で、ここに来て正解だったと思っています。


小野先生の研究室はこちらのリンクからご覧いただけます。

国際都市計画研究室(小野悠研究室)


岩隈

岩隈

そう思い始めたのは何か特別なきっかけがあったのでしょうか?

松下さん

松下さん

カンボジアでのボランティアですね。

高専に入り建築を学んでいく中で、あんまり自分には向いてないんじゃないかなと思って、0から1に起こすのが苦手と感じるようになっていたんですよね。

その時に担任の先生に勧められて参加したのが大きなきっかけでした。

岩隈

岩隈

海外でボランティアってなかなか踏み出せない気もしてますが、どのようなことがあったのでしょうか?

松下さん

松下さん

約3週間、農村部などで活動する中で出会った親に売られて体を売って生活していた女の子は、将来は教師になりたいと話していました。

表情は笑顔なのに、その瞳からはどこか光が消えているように見えたんです。でも前向きに生きている。

その姿にショックを受け、「0から何かを生み出す」のではなく、「1を持っている人を100にして支えたい」と思うようになったんです。

「自分は発起人にならなくても、一緒に道を伸ばす役割のほうが向いているかもしれない」って。

岩隈

岩隈

先ほどの考え方が、今のザンビアでの研究にもつながっているんでしょうか?

松下さん

松下さん

はい、まさにそうです。現在はザンビアというアフリカの内陸国にある都市を対象に、発展の過程を調査する研究を行っています。

スラムのような地域で、実際にどのような変化が起きているのか、住民たちはどう生活を改善してきたのかを、現地でのアンケートやインタビューを通して丁寧に追いかけています。

岩隈

岩隈

建築ということでインフラや建物などをイメージしましたが、都市の「発展」ということで松下さんの研究は少し違うんですね。

松下さん

松下さん

そうですね。もちろん建築や都市整備といったハード面も重要なんですが、僕自身はそれ以上に「誰がどこで、どう暮らしているのか」というソフト面に興味があります。

実際に生活している人たちの声を聞き、その背景や暮らしのリアルを知ることで、「何を整備すべきか」「どんな支援が意味を持つのか」が見えてくると思っているんです。

岩隈

岩隈

具体的には、どんな成果や学びが見えてきているんですか?

松下さん

松下さん

一つの目的は、「現地の発展の実態」と「政府の政策」との間にあるズレを明らかにすることですね。

政府がこうしたいと思っていることと、実際に住民が求めていることは必ずしも一致しないことがある。

そのギャップを埋めることで、より実効性のある都市政策の提言につなげたいと考えています。

学外活動への挑戦─「外に出なきゃ成長できないと思った」

岩隈

岩隈

研究以外にも学外の活動に参加しているそうですが、具体的にはどのようなことをしているんですか?

松下さん

松下さん

今は、“BEAU LABO”という教育プロジェクトに参加していて、高校生の探究活動をサポートしています。

もうひとつは、「ばらばら」というまちづくり団体で、地域をより良くするためのイベントや企画に取り組んでいます。

「ばらばら」は、同じ研究室の先輩や後輩に誘われたのがきっかけ。

これまで海外ばかり見てきたので、日本の地域にもちゃんと目を向けたいと思って参加しました。

BEAU LABOは、その「ばらばら」のメンバー経由で声をかけてもらって、面白そうだなと思って飛び込んだ感じですね。


BEAU LABO、ばらばらの詳細はこちらのリンクからご覧いただけます。

BEAU LABOばらばら


岩隈

岩隈

そのように学外に飛び込んでみようと思った背景には、どんな思いがあったのでしょうか?

松下さん

松下さん

大学院に進んでから、「このままでは成長が頭打ちになるかもしれない」と感じるようになったんです。

研究を通して学べることはもちろんたくさんあるんですが、人間としての幅やコミュニケーション力に限界を感じていて。

このまま研究室の中だけにいたら、もっと上には行けないんじゃないかと思ったときに、「じゃあ、外に出てみよう」と。

教育分野に特別興味があったわけではなく、新しい環境に身を置いて自分を揺さぶりたかったというのが本音ですね。

岩隈

岩隈

実際に外に出て活動してみて、得られたものはありましたか?

松下さん

松下さん

たくさんあります。たとえば、BEAU LABOでは他大学の学生と一緒に高校生のサポートをしていますが、みんな本当に多様なんです。

得意なことも違えば、活動に対するモチベーションや考え方も違う。

「相手を知ること」が何より大事なんだなって実感しました。自分の考えだけじゃなくて、「この人はどう思っているんだろう?」と相手の立場を考えるようになったのは大きな学びです。

そういう姿勢は、研究室や他の場でのディスカッションでも役立っています。

岩隈

岩隈

そうした経験の中で、「自分の強み」や「自分らしさ」について気づいたことはありますか?

松下さん

松下さん

僕はガンガン引っ張るタイプではなく、寄り添いながら相手をサポートするタイプなんだなと気づきました。

たとえば高校生にもただ「こうしたらいいよ」と言うんじゃなくて、「この子は今何を感じているんだろう?」とまず考える。

チームでも全体を俯瞰しながら、「ここは誰かがサポートした方がいいな」とか、「あの人はやりづらそうだな」と気づくことが多いんです。

0から何かを生み出すより、1を整理したりつなげたりする役割が向いているんだと思います。

岩隈

岩隈

それって、まさにカンボジアで感じた「1を100にする」という考え方にも通じていますよね。

松下さん

松下さん

そうですね。あのとき「自分がやるべきこと」に気づいたのは、今の活動の中でもずっと芯になっています。

周りの持っているものや可能性を伸ばしたり、引き出したりするサポート的なポジションにいると、自分の良さが一番活きると感じています。

岩隈

岩隈

これまでたくさんの活動に取り組んできたと思いますが、改めて振り返って、成長を感じるのはどんな瞬間ですか?

松下さん

松下さん

一番大きいのは、「相手の立場で考える力」がついたことですね。

以前は自分の考えを主張することが中心でしたが、今は「なぜこう言ったのか」「どういう背景があるのか」を意識して考えるようになりました。

それによって、単純な議論じゃなく建設的な話し合いができるようになってきた感覚があります。

研究でも活動でも、対話の質が変わったのは大きな成長です。

岩隈

岩隈

今後は、こうした経験をどのように活かしていきたいと考えていますか?

松下さん

松下さん

地域の教育やまちづくりに関わることをやっていきたいですね。

自分で教育機関のようなものを立ち上げたり、必要な学びの場をつくったり。

都市計画って結局「人がどう生きるか」を考えることなので、その中で教育や暮らしの基盤を支える仕組みづくりに自分の経験を活かせたらと思います。

自己管理の徹底が生み出す、日常の効率化

岩隈

岩隈

研究や学外活動でお忙しいと思いますが、どんなことを大切にして日々を過ごしていますか?

松下さん

松下さん

一番大切にしているのは、「健康」ですね。

タバコは吸わない、お酒も基本1人では飲まない、睡眠時間はなるべく一定、筋トレを週に数回、常温の水を飲んで糖質やお菓子もほとんど摂りません。

岩隈

岩隈

かなり徹底されていますね。それってどうしてなんですか?

松下さん

松下さん

僕、多分“効率厨”なんですよ(笑)。

「一番効率のいい生き方って何だろう?」と考えたときにたどり着いたのが「健康」でした。

少しでも体調が悪いと集中力もパフォーマンスも落ちるので、日々の生活のクオリティを上げるにはまず健康だと思っています。

岩隈

岩隈

でも、健康を意識して継続するのは難しそうです。どうモチベーションを保っているんでしょうか?

松下さん

松下さん

僕、“自分で自分にルールを課す”のが好きなんです。

たとえば「エアコンをつけずにどれだけ耐えられるか」とか、「寒い中でどこまで集中できるか」とか、小さな試練を課して乗り越えるのが面白い。

「まだこんなこともできる」「まだここまでしかできないんだ」って、期待と失望を繰り返すのがゲーム感覚で楽しいんですよ。

岩隈

岩隈

なるほど、限界を楽しむタイプなんですね。忙しいと決まった時間に寝るのは難しそうですが、どうされてますか?

松下さん

松下さん

逆に僕は、決まった時間に寝て決まった時間に起きます。

夜は1時半〜2時くらいに寝て、朝は7時に起きる。

食事時間を短縮して、実質1日15時間活動できるようにするんです。

「今日はこの15時間で何をしよう?」と考える感じですね。

24時間をフルで使おうとすると「あれもやりたい、これも足りない」となりますが、あらかじめ「1日15時間」と決めておくと、その中でうまくやりくりできます。

寝る時間は削らず、「使える時間」を意識することで無理をしないんです。

岩隈

岩隈

初めて聞く考え方です(笑)。そこまでルールを決めていて、それをポジティブに楽しんでるのがすごい。

真似できるかはわかりませんが、面白いです。

松下さん

松下さん

このルールでやってると「まだまだ自分は頑張れる」と思えて、モチベーションも自然に湧いてきます。

研究に打ち込んで、学外活動もして、ゲームもする時間がある。

全部こなせたときの達成感はすごく気持ちいいですね。

これからのキャリア・将来像

岩隈

岩隈

これからのキャリアや研究について、何か思い描いている未来があれば教えてください。

松下さん

松下さん

今は博士課程に進もうかと考え中です。夜中に博士論文の構想を書き始めたばかりで、まだ決めきれてはいませんが。

地域おこし協力隊のように現場で地域に関わる仕事もしてみたいとも思っています。

岩隈

岩隈

フィールドに出て活動することにも興味があるんですね。

松下さん

松下さん

はい。論文やフィールドワークだけでは物足りないというか、もっと人と深く関わって一緒に高め合いたいんですよね。

なので、地域づくりに関わる仕事ベンチャー的な組織に関わるのも面白そうだなと思っています。

岩隈

岩隈

博士に進んだあと、就職についてはどう考えていますか?

松下さん

松下さん

JICA(国際協力機構)のような国際的なフィールドも興味がありますし、都市計画系の一般企業の海外部署にも関心があります。

逆に、「もう海外じゃなくて日本でもいいのかな」という思いもあって、「博士号を取ったからこそ行ける場所」よりも自分の価値観に合う場所で働きたいですね。

最終的には孤児院を開いて、教育や建築を通じて地域の教育水準の向上に寄与できたらと思っていますが、そこに行き着くまではまだ具体的に定まっていません。

岩隈

岩隈

では、10年後の自分はどこで何をしていると思いますか?

松下さん

松下さん

10年後は34〜35歳くらい。普通に働いていてほしいですね(笑)。

20代だからこそ色々な挑戦をやっていますが、30代は一度落ち着いて土台を固める時期にしたい。

20代では尖ったことや人と違う挑戦を積極的にしてきましたが、30代は体力と経験がバランスよく整うので、そこで真面目に仕事と向き合ってキャリアを築きたいですね。

10年後の理想は、「普通に働いている大人」

今の尖った自分が少し丸くなっていたら嬉しいです。もしかしたら「痛い大人」になっているかもしれませんけど、それも含めて楽しみですね(笑)。

何かやりたいことがあるなら、まず“声に出してみる”

岩隈

岩隈

最後に、技科大の学生や「何かやりたいけど踏み出せない」という人に向けて、メッセージをお願いします!

松下さん

松下さん

「人と話すこと」が一番大事だと思っています。

もし何かやりたいことがあるなら、まず“声に出してみる”

誰でもいいので声をかけてみると、意外な人とつながって、自然と実現に向けて動き出すことってあるんですよね。

松下さん

松下さん

逆に、「声に出せないこと」はまだ自分で整理できていないかもしれないし、本気でやりたいと思ってないのかもしれない。

だからこそ「やりたい」を言葉にしてみるのが、最初の“0歩目”

自分の気持ちに正直に、外に出していくことが一番のきっかけになると思います。

岩隈

岩隈

本当にそうですね。自分に声をかけてもらっても大丈夫です!

僕自身も、声を出すことで思わぬところで人とつながったり、アイデアが広がった経験があるので、まず声に出すのは大切だと思います。

岩隈

岩隈

今日は本当にありがとうございました。いろんな話を聞けて、自分自身もすごく刺激を受けました。

松下さん

松下さん

こちらこそありがとうございました。話すことで自分の考えも整理できましたし、またいつでも声かけてください!

おわりに

松下さんのお話から感じられるのは、挑戦への積極性自己への誠実さです。

自分の興味や可能性を見つけるためには、「まず動いてみること」が大切だということを改めて気づかされました。

この記事を通じて、皆さんの中にも「自分も何かに挑戦してみようかな」という小さな一歩が芽生えてくれたら嬉しいです。


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